負担の少ない心臓手術を目指して②
リードレスペースメーカー
Leadless pacemaker
提供:日本メドトロニック(株)
心臓の筋肉が同調して規則正しく動くためには電気的な信号を伝える電気の通り道(刺激伝導系)が重要です。その刺激伝導系が正常に働かなくなり、規則正しい心臓の動きや脈拍に乱れが生じてしまう状態を不整脈といいます。その中でも脈が遅くなる「徐脈」では、血液が脳や全身に届かなくなる時間が生じることで、めまいやふらつき、動悸、失神などを起こします。
徐脈になる主な原因として、リズムを司る細胞の機能が低下するもの(洞不全症候群)、リズムを司る細胞からの電気信号をうまく伝えることができない刺激伝導系の障害(房室ブロック等)などがあります。いずれも刺激伝導系の電気信号さえきちんと伝われば心臓は正常に動くため、心臓の刺激を規則的にしてあげることが治療になります。徐脈を起こした患者様にの脈拍を正常に保つよう、補助的に電気信号を送る機械がペースメーカーです。
ペースメーカーには、本体にリードと呼ばれる導線が付いているリード付きペースメーカーと、カプセル型のリードレスペースメーカーの2種類があります。今まではリード付きのタイプしかありませんでしたが、2017 年、リードを必要としないリードレスペースメーカーが利用できるようになりました。
リードレスペースメーカーは従来のリード付きペースメー
カーと違い、
①静脈にリード(導線)を入れる必要がない
→リードによる合併症がない
植込み後の生活制限が少ない
②機械を皮下に植え込む必要がない
→皮下ポケットの合併症がない
胸に傷やふくらみがない
などのメリットがあります。
リードレスペースメーカーを植込む手術には一定の要件があります。循環器内科で不整脈の評価を行い、共同で手術、治療に当たります。
リードレスペースメーカー植込み手術
S-ICD(皮下植込み型除細動器)
Subcutaneous Implantable Cardioverter Defibrillator
提供:日本メドトロニック(株)
提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン(株)
突然心停止の原因となる不整脈発生時、心臓に電気ショックを送り、心臓が身体に血液を送り出せるよう、正常な心拍に戻す機器です。このような機器は、ICD(植込み型除細動器)と呼ばれ、皮下植込み型除細動器(S-ICD)システムと経静脈ICDシステムの2種類があります。
S-ICDシステムは、心臓突然死のリスクを抱える患者様を、心臓と血管系に触れずに心臓突然死から保護するために開発されたものです。
従来の経静脈ICDとの相違点
①経静脈リード挿入時の血管損傷を回避できる
②血流感染のリスクを軽減できる
③リード挿入による血管の犠牲がない
以上のような特徴から患者様の体の負担やリスクを軽減できるものと考えられます。適応に関しては、ガイドライン(国内外の診療の指針)に準じて判断します。